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西川美和監督が自身の小説「永い言い訳」を映画化(2015.08.03)

「ゆれる」「ディア・ドクター」「夢売るふたり」など自ら原案・脚本を手掛ける完全オリジナル作品を発表してきた西川美和監督が、第153回直木賞の候補となった自身の著作「永い言い訳」を映画化し、アスミック・エース配給により2016年に全国公開する。

妻・夏子を突然のバス事故で失った人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、夏子との間に既に愛情と呼べるものはなく、悲しみを演じることしかできないでいた。そんなある日、同じ事故で亡くなった夏子の親友の遺族と出会い、幸夫は自分でも理由がわからぬまま、母を亡くした幼い兄妹の面倒を見ることを申し出る。これまでも、家族、兄弟、ニセ医者、夫婦と様々なモチーフを用いながら“嘘”があぶり出す“真実”を描いてきた西川監督は、2011年の震災以降、どんな物語を書くべきか立ち止まっていたという。今回は新たに人と人の“別れと出会い”を描き出すということで「失うということがもたらす『はじまりの物語』を描きたいと思いました。これまで私は安定していたはずの関係性が壊れてゆく物語を描いてきたように思いますが、崩壊のその後、再び作り上げて行くということについてきちんと描いたことがなかったからです。『はじまりの物語』を綴ることは、人生を漕ぎ進むことの難しさに似ていますが、同時に明るさや楽しさにも満ちています」とコメント。また、自身の小説を映画化することについては「いつもはじめに脚本というかたちで物語を組み立ててきましたが、予算や時間の制約という映画的な課題を一旦据え置いて、先に小説というかたちで自由に物語を作ってみることにしました。そうすることで『豊かな無駄』をゆっくりと熟成し、登場人物や物語を練りこむ時間が取れたと思っています。小説は私の持ちうる言葉の限りで多くを語っていますが、今度は言葉では語り得ないものをいかにスクリーンに映し出すかが第二の挑戦となりそうです」と述べている。今年の春にクランクインし、四季のパート撮影を経て12月にクランクアップ予定ということで西川監督は「長期に亘る撮影ですが、キャスト、スタッフと共に新しい映画を探し求めて行きたいと思います」と意気込んでいる。

(8月2日付 日刊興行通信より)

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