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庶民からみた戦争被害を描いた「一枚のハガキ」会見(2010.10.27)

新藤監督を囲んで、主演の大竹と豊川 新藤監督を囲んで、主演の大竹と豊川

開催中の第23回東京国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されている「一枚のハガキ」の記者会見が10月27日(水)に行われ、原作・脚本・監督の新藤兼人と出演の豊川悦司、大竹しのぶが登壇した。

98歳の日本最高齢映画監督である新藤兼人監督が「人生最後の作品」と語る本作。前作「石内尋常高等小学校 花は散れども」に続き、主演に豊川悦司と大竹しのぶを迎え、戦争に選択権なしに狩り出された庶民に対する思いを描いた。

孫の風さんに寄り添われ、
質問に向き合う監督 孫の風さんに寄り添われ、
質問に向き合う監督

豊川悦司が演じる主人公の松山啓太は、戦争末期に招集された中年兵100人のなかの一兵隊。上官によるクジ引きでそれぞれ次の戦地が決められるものの、啓太は“クジ運が良かった”のか、前線行きにハズれた6人に残り、終戦を迎えた。これは、当時二等兵だった監督自身の戦争体験で、自身の心の置く深くにずっと「つきまとっていた」記憶だという。これまで何度も「これで最後」と言いつつ、次回作を手掛けてきた監督だが、映画人としての創作の原点でもあるこのテーマに向き合うというだけに「この映画を最後にする」という宣言には並々ならぬ決意があるようだ。

戦争から戻った啓太は、フィリピン行きが決まった兵士・定造(六平直政)に、妻・友子(大竹しのぶ)からの一枚のハガキを託されていた。ハガキには「今日はお祭りですが あなたがいらっしゃらないので 何の風情もありません」との一文。「検閲があるから返事が書けない。お前が生き残ったら、妻に渡してくれ」と言うのだ。手紙の出し主である友子は、夫の亡き後、義父に懇願され夫の弟と再婚するものの、弟にも赤紙が来て戦死。そして義父はショックで死に、義母も自殺する。

「一家の一兵士が死ぬと家庭はむちゃくちゃになる。それが戦争。戦争の本質」と語る監督の、遺言ともいえる物語を演じた豊川は「戦後60年経っても、世界のどこかでは戦争や紛争があり、全然変わっていない。そして常に犠牲になるのは女性や子供や、兵士の家族など一般市民で、戦争をすると決めた人たちではない。そういう意味でもこの映画は、世界中の人々に共感して観てもらえる作品だと思います」と述べ、この作品が持つ普遍性を語った。また大竹は、「新藤監督がおっしゃったように、小さな映画人の小さな映画ですが、この映画に関わった人たちの思いが、映画を観た人々につながっていけばいいな、そう思いながらこれからも作っていきたい」とラストをしめた。

公開情報 東京テアトル配給「一枚のハガキ」は2011年夏よりテアトル新宿ほか全国公開。

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