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改めて戦争とは嫌なものだと思った。「日輪の遺産」完成報告会見(2011.04.19)

「鉄道員」や「地下鉄に乗って」、「蒼穹の昴」など数々の名作を世に送り出してきた作家・浅田次郎氏の原点とされる小説を映画化した「日輪の遺産」の完成報告会見が4月19日(火)に行われ、主演の堺雅人をはじめ、福士誠治、八千草薫、佐々部清監督、そして浅田次郎氏が登壇した。1945年8月、日本の敗戦が間近に迫る中、戦後日本の復興のために下された密命。それは「マッカーサーの財宝900億円(現在の貨幣価値で約200兆円)を隠匿せよ」というものだった。

原作の浅田次郎氏は「この小説は18年前に刊行されたもので、すんなりと小説家になれず足踏みしていた時に、好きなものを書いていいと編集者に言われ、勢い勇んで書いた記念碑的作品です。こんな素晴らしい映画にしていただき感激しています」と挨拶。

密命を下される軍人・真柴を演じた堺雅人は「原作を読んだ時、脚本を読んだ時、現場に入った時、そして完成作を観た時、それぞれ自分の中で違って、把握しきれない凄く大きな作品でした。戦争という消化しきれなかったものをずっと抱えてきた日本の姿が描かれ、心にひっかかる作品になりました」と語り、同じく極秘任務に当たる小泉を演じた福士誠治は「佐々部監督とはデビュー作の映画『チルソクの夏』でご一緒し、会う度に今度一緒にやろうと言っていただいていましたが、8年ぶりに戦争をテーマにした壮大な作品に参加させていただくことになり、とても緊張しました。その緊張が良い形でスクリーンに映っていたら嬉しい」と明かした。

真柴や小泉と共に女学校時代に特別任務に就いた経験を持つ久枝を演じた八千草薫は「去年は終戦から65年ということで、戦争のドラマやこの映画にと立て続けに3本出させていただき、否応無しに当時のことを思い出しました。少女時代の久枝と私自身が終戦を迎えた年が同じ頃で、思い入れが強すぎて」と語り出し「改めて戦争とは嫌なものだと思いました。もっと客観的に演じられたら良かったのかも。テストしている内に気持ちがいっぱいになってしまって。あの頃、私も学徒動員に行かされて、なんだかわからない機会の断熱材を作ったり、軍服のボタン付けをしたり、そんなことばかりしていた1年がありました。今、この財宝があって、震災で被災している人たちのために使えたらと思いました。映像で見ただけですが津波の後の被災地は、戦争中の焼け野原と同じようで、またこの映画のことを思い出しました」と感慨深げだった。

佐々部清監督は「僕にとってこの作品は、デビュー作の『陽はまた昇る』から10本目の作品で、“日輪“とは太陽のことなので、一回りした感じがします。助監督の1作目が『鉄道員』で、その当時、浅田さんの『地下鉄に乗って』も読んで、いつか映画化したいと思っていましたが、同じ浅田さん原作の『日輪の遺産』が監督10作目になったのは本当に嬉しい」と語り、「いつ映画ができるかわからない中、作品を預けてくださった浅田先生と、戦争というデリケートなテーマを世に送り出そうとしてくれた角川映画に感謝しています。それに恩返しできるのは、多くの方にこの作品を観ていただけることだと思っています」と語り、堺雅人も「戦争という見通しの悪い時代に、自分たちの判断を積み重ねていく。そのことが人の価値を決めるのではないかと思いながら演じました。見通しが悪いと言えば、今の時代もそう。それでも出来ることはあり、今の状態をしっかり受け止めて進んでいこうと思うし、この映画の登場人物たちのことを思い出して、今の自分の指針にしています」と締めくくった。

この日は、マスコミ披露試写会が終ってからの会見ということもあり、作品を観終えた記者たちも感慨深げに登壇者の話に耳を傾け、話が終る度に温かい拍手が何度も起こる会見となった。

公開情報 角川配給「日輪の遺産」は8月27日(土)から角川シネマ有楽町ほか全国公開
公式サイト:http://www.nichirin-movie.jp/

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