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『無言歌』ワン・ビン監督来日会見「今後も自由に映画を撮っていければ」 (2011.10.12)

2010年ベネチア国際映画祭でサプライズ上映され、世界中の映画マスコミから圧倒的評価を集めた「無言歌」のワン・ビン監督が来日し、10月12日(水)に会見を行った。会場となったオーディトリウム渋谷では、ワン・ビン監督の全作一挙上映が行われており、これまでの作品についても数多くの質問が飛び交った。

「鉄西区」、「鳳鳴―中国の記憶」で、山形国際ドキュメンタリー映画祭グランプリに2度輝いたワン・ビン監督が、文化大革命前の中国で行われた知られざる悲劇『反右派闘争』を題材に、反体制者のレッテルを貼られ、ゴビ砂漠の収容所で過酷な生活を強いられた人々を描き出す。同監督にとって初の劇映画であり、ヤン・シエンホイの小説「告別夾辺溝」と多くの生存者たちの証言に基づいた実話を映画化した。

ワン・ビン監督は、あまり日本人には馴染みのない『反右派闘争』について「この闘争は、1957年、国家機関に所属する人や事業体、企業に所属する人や民主党派と呼ばれる人たちに対して発動された。農民や労働者以外の知識人に向けて、“国に色々意見を述べなさい”というところから始まったもので、5%の人を右派とする命令が下った。そのようにして右派とされた人達は、重い場合は監獄に入れられたり、収容所に送られ労働を強要され、軽い人でも農村での労働を強いられた」と説明した上で、「この闘争については数多くの本が出ているし、自分自身映画を作ることで、どうこうしようという政治的意図は無かった。ただ、原作の小説を読み本当に感動し、収容所にいた右派の人々について、映画を通して語りたいと強く思った」という。その過程で出合った、右派のレッテルを貼られた和鳳鳴(ホー・フォンミン)という老女の名誉回復までの苛烈な歴史をドキュメンタリーとして撮ったのが『鳳鳴―中国の記憶』であることを明かし、「『鳳鳴』は彼女の語りによってこれまでの人生を振り返る“聞く映画”だったのに対し、『無言歌』は今日の私たちが当時の右派の人達に対して、どのように思い、どう歴史を捉えるかが物語の中心で、“映画を見る”ことへの可能性を探った作品」と語った。

いまだに中国ではタブーとされている『反右派闘争』を扱っているため、現在もなお中国本土での上映は禁じられているが、「作品を撮るにあたり、香港、フランス、ベルギーの会社の出資で成り立ち、中国の製作会社が入っていないので、電影局への申請をもともと考えていなかった。その分、精神的プレッシャーもなく、自由に撮ることができた。テーマがテーマなので、申請してもなかなか難しかったのではと思うが、そういうことに関わらず、今後も自由に映画を撮っていければと思っている」と話す一方で、「現在、中国では大作映画が沢山作られていて、映画館では有名な監督の作品や娯楽作品が上映される。文化的政策も要因の一つだが、中国では商業的にもこういう作品は難しいので、僕の作品が映画館でかかることはない」と自らの見解を述べた。そんな中で、全作一挙上映に多くの人が足を運んだことについて、「僕の作品はとてもパーソナルで、楽しく観たりするものではなく、観客の好みをあまり考えないで撮っている。そんな作品にも限らず、沢山の人が見に来てくださり感謝しています」と喜びを語った。

公開情報 ムヴィオラ配給「無言歌」は12月17日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
公式サイト:http://www.mugonka.com/

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