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「Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」のヴィム・ヴェンダース監督が来日「自分の人生を変えるほどの衝撃」(2011.10.25)

現在開催中の第24回東京国際映画祭特別上映作品「Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」(ギャガ配給)のヴィム・ヴェンダース監督が5年ぶりに来日し、記者会見に登場。2009年に突然この世を去ったドイツの天才舞踊家ピナ・バウシュの作品世界を、20年来の友人であり、「パリ・テキサス」や「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で知られるヴェンダース監督が、アート映画として世界初、そして監督自身としても初挑戦となる3D映画でよみがえらせた。会見には、ピナ・バウシュの熱狂的ファンであり親交も深かったという楠田枝里子も駆けつけ、ピナの魅力を語った。

バレエと演劇の垣根を取り払い、全く新しいジャンルを生み出した世界的舞踊家で振付師であり、作品を観た人々に“五感を揺さぶり、肉体を刺激し、心を裸にする体験”と言わしめるピナ・バウシュ。本作は、生前ピナが選んだ4編の舞台に加え、劇場を飛び出して現代建築や自然の中で繰り広げるダンサーたちのパフォーマンスと、ピナの貴重な映像で構成され、世界14もの映画祭で注目を集めた他、アカデミー賞外国語映画ドイツ代表にも選出される快挙を遂げた。

1985年、イタリアのベネチアで初めて彼女の作品と出会ったヴェンダース監督は、「それまでダンスというものに全く興味がありませんでしたが、ピナの作品を観た時、踊りがはじまって5分後から涙が止まりませんでした。圧倒的な心揺さぶるものがあり、脳では理解できていないけれど、肉体が感じているのは確かで、自分の人生を変えるほどの衝撃でした」と振り返る。「彼女は他の振付師とは全く異なり、『私に興味があるのは、ダンサーたちがどう動くかではなく、何がどう彼らを動かすかということ』という彼女自身の言葉が物語るように、人間の魂を探求していた人。ダンサーたちに、今までの人生で何を見て何を感じたか、とても個人的な質問を沢山投げかけ、ダンサーたちから答えを引き出していき、それが表現となり作品づくりが行われていました」と魅力を語った。

親交を深めた監督とピナは映画化の約束を交わすが、その躍動感と生命力に満ちたダンスを伝える術がみつからず、20年近くの歳月が経っていたという。「彼女とはずっと一緒に映画化の夢を描いていたが、本来描きたいピナを表現する方法が見つかりませんでした。しかし3D技術に出会ったことで、やっと2008、2009年ころにスタートする準備に取りかかりました。そんな時、彼女の突然の死があり、一度は製作を諦めましたが、ダンサーたちの必死の説得と、なにより彼女が映画化を切望していたことを知り、再度映画化をはじめることが出来ました」と話した。今回初挑戦となった3D 技術だが「それまで3D映画に興味はありませんでしたが、これほど可能性に満ち、ダンスに合った技術はありません。この技術のおかげで、ダンサーたちの王国に私自身が入ることができたし、人間の体の圧倒感や存在感を表現することができました。3D技術がなければ、おそらくこの作品を作らなかったでしょうし、これこそ出会いだと思いました」と3D技術を絶賛。その上で、「我々映像作家が3D技術を使いこなし、アトラクションとしてだけの使用を避けなければならない。今回やっと手探りで3Dを利用しましたが、これからも使っていきたいと思います」と、今後の3D映画の製作にも意欲をみせた。

会見の終盤に花束を持って駆けつけた楠田枝里子も20年ほどピナと親交があったという。「ピナが亡くなって私は大きな喪失感を感じていましたが、この映画を見て、ピナに再び出会えた歓びと興奮で熱くなり、何度も涙しました。映画を見ている間中、再びピナと共にいて時間をすごしている気分になりましたし、とても大きなエネルギーをもらいました」と映画を絶賛すると、監督も「ダンサーたちもまさにそう。彼らにとってこの作品は、ピナのために作るということ以上に、ピナの突然の死によって彼ら自身大きな穴があいてしまって、生きていくための何かが必要でした。そういう意味でこの映画が役にたったと話していました」とダンサーたちにとってもこの映画化が不可欠だったことを明かした。楠田は最後に「ピナ・バウシュを全く知らない人も、少し知っている人も、私のように熱愛している人も、それぞれの立場で大きな衝撃を得、心揺さぶられる映画になっています。ピナ・バウシュなんて知らないなどといわず、1人でも多くの人がこの映画をみてくださることを願っています」とピーアルした。

尚、監督は、10月27日に福島県の映画館・福島フォーラムを訪問、舞台挨拶と上映を行い、現地の人々との交流なども予定している。

公開情報 ギャガ配給「Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」は2012年2月25日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9他全国順次3D公開
公式サイト:http://pina.gaga.ne.jp/

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