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監督としては最後の作品「ニーチェの馬」タル・ベーラ監督来日記者会見(2011.11.22)

「倫敦からきた男」などモノクロームの映像にこだわり続けるタル・ベーラ監督が来日し、最新作であり最後の作品と公言している「ニーチェの馬」について11月22日(火)、駐日ハンガリー共和国大使館で語った。

本作は、トリノの広場で泣きながら馬の首をかき抱き、そのまま発狂したとされるドイツの哲学者・ニーチェの逸話にインスパイアを受けたタル・ベーラ監督が描き出した2時間34分の大作。第61回ベルリン国際映画祭では銀熊賞(審査員グランプリ)と国際批評家連盟賞をダブル受賞し、来年度の米国アカデミー賞外国語映画賞のハンガリー代表にも選ばれている。

何故映画制作を本作で終わりにしようと思ったのかを問われると「34年間映画を作り続け、それは自分にとって非常に長い道のりでした。その間、私は人間というものを理解しようとしてきました。人生というものにより近づこうとし、自分の見る世界を人々に伝えようとしてきました。今回の作品に入る前に『これが最後の作品であろう』と私自身は感じていました。この作品をもって、ひとつのサイクルが終わる、自分の仕事を終える準備が整ったという気持ちでした。ですから、自分にとって新しく作品を作ることは、繰り返しであり、模倣でしかなく、その理由が全く見つかりません。今まで作ってきた映画は全て“自分自身”からきています。とても深遠なものがそこにはあります。それを模倣するようなことをしてしまったら、出来た作品は非常に醜く、チープなものになってしまうと思っています。言いたいことは全て語り尽しました」と明かした。

また、本作がニーチェの逸話からインスピレーションを受けていることについては「1985年に出会った友人であり、脚本を共同で担当してくれている小説家のクラスナホルカイ・ラースローが、ニーチェの逸話をレクチャーしていた時、彼が『あの馬は一体どうなったのだろう』と言ったのです。この疑問はずっと我々の心に引っかかり、そして心を動かすものでした。そして馬に何があったのか、答えねばならないという想いに駆られました。答えを導きだそうと、一緒に試行錯誤を繰り返しましたが、その答えは出ず、33年の月日が経ました。この『ニーチェの馬』が我々の答えです」と長い年月をかけて本作を作り出したことを語った。

残念なことに、映画監督としては本作が最後となってしまうということだが、今後の活動については「一つはっきりしているのは、自分は今でも映画作家であるということ。ただカメラには触れるつもりはありません。出来ることは二つあります。一つはプロデューサーとして。若手、そして経験がある人も、今の映画業界の中で映画を作る場が無い方々を助けていきたい。プロデューサーは辛い、弱い立場にある人に、傘を差し出すように守っていく存在である。もう一つは、映画を教えること。しかしながら映画を100パーセント教えることは無理なことです。しかし若い人とは一緒に仕事をしたいと思っています。映画というものがいかに色彩豊かなものか知って欲しい。映画監督たちが自信を持って、自分自身を表現して欲しい。その世界を人々に伝えて欲しい。彼らに自分のやりたいことを妥協せずに伝えて欲しいと伝えたい」と語り、次の世代へ伝承していくことを約束した。

公開情報 ビターズ・エンド配給「ニーチェの馬」は2012年2月、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/uma/

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