その年の映画賞の先陣を切って発表される｢第41回 報知映画賞｣の表彰式が12月20日（火）に行われた。これから始まる賞レースの受賞者・受賞作品を占う意味で大きな注目を集めている報知映画賞だが、今年は作品賞・邦画には｢湯を沸かすほどの熱い愛｣、作品賞・海外部門には｢クリード チャンプを継ぐ男｣が選ばれた。｢湯を沸かすほどの熱い愛｣は作品賞だけでなく、新人賞（中野量太監督）、主演女優賞（宮沢りえ）、助演女優賞（杉咲花）と4冠を制した。

中野監督は｢作品賞を取ったと最初に報せが来て、主演女優賞も取ったよ！助演女優賞もだよ！と嬉しさでお腹が一杯になったところに、新人賞も取ったよ！と言われました。40歳を過ぎて新人賞というのもどうなのか？と思いますが、恥ずかしさの100倍くらい嬉しいです！新人賞にもノミネートされていた杉咲花より僕の方がフレッシュだったのだと、花には言い続けたい！｣と冗談めかした。

また、作品賞受賞についても｢母親の役が胆になると思い、同世代でトップランナーとして走り続ける宮沢りえさんにお願いしました。名も無い僕のオリジナル脚本をりえさんが受け止めてくれたからこそ、作品がここまでこられたのだと思います｣と語り、スタッフやキャストにも感謝の言葉を述べた。

史上2番目の若さとなる19歳で助演女優賞を受賞した杉咲は｢監督は現場で興奮して鼻息が荒くなってしまうこともありましたが、優しさと愛情を受け取りました。『あの人のために何でもしてあげたいと思えるのは、自分がその何倍もしてもらっているから』という台詞があって、まさに監督のことだと思いました。そしてカメラが回っていない時もお母ちゃんとして接して下さったりえさんに感謝します｣と初々しくコメント。

3度目の報知映画賞受賞となった宮沢りえも｢本当に嬉しくて、もっともっと頑張ろう！そうしないとバチが当たると思っています。この作品からは、大切な人を惜しみなく愛し、想うことを教えてもらいました。それは役者としても人間としても、とても大きな財産となりました。今日は監督がちょっと浮かれているような感じですが（笑）、誠実に頑張っていきましょうね！｣とエールを送った。

3作品の演技により助演男優賞を受賞した綾野剛は、｢リップヴァンウィンクルの花嫁｣で共演し、11月に逝去したりりィの姿が今でも焼き付いていると語り、｢64−ロクヨン｣主演の佐藤浩市には｢背中で全てを示してくれた。すごいパワーを感じた｣と感謝。そして｢怒り｣でゲイのカップルを演じた妻夫木聡については｢マイノリティというセンシティブな役で、妻夫木さんがいなければ本当に何も成立しなかった｣と明かし、妻夫木からの｢奥深くて、期待を裏切らない人。今度、一杯おごらせてください｣という祝辞を嬉しそうに聞いていた。

また、｢葛城事件｣で主演男優賞を受賞した三浦友和は｢結婚して5年目くらいの33歳の頃に相米監督の『台風クラブ』で報知映画賞をいただき、俳優という仕事をどうやって続けていけばいいか見えない時だったので、背中を叩かれ『もっと頑張れ！』と言われたような気持ちがした。この30年間、相米監督をはじめ、素晴らしい方々との出会いがあって、また賞がいただけたのだと思っています｣と感慨深げにコメントした。

特別賞を受賞した｢君の名は。｣の新海誠監督は、花束贈呈のために駆けつけた神木隆之介を見て｢スペインへ撮影に行っていると聞いていたので、まさか来てくれるとは！｣と驚きつつも｢下北沢の50席のミニシアターでアニメーションを製作したのがスタートでしたが、その時から僕がやっていることは変わっていなくて、優れたスタッフやプロデューサー、キャストの方々が助けて下さり、1500万人に届く映画を作ることができるようになりました｣と語り、神木も｢素敵な映画に携われて光栄でした。ずっと応援していますので、体調に気を付けてください！｣と監督を労った。

【第41回 報知映画賞 受賞結果】
▽作品賞・邦画部門＝｢湯を沸かすほどの熱い愛｣中野量太監督、クロックワークス配給
▽作品賞・海外部門＝｢クリード チャンプを継ぐ男｣ライアン・クーグラー監督、ワーナー・ブラザース映画配給
▽主演男優賞＝三浦友和｢葛城事件｣
▽主演女優賞＝宮沢りえ｢湯を沸かすほどの熱い愛｣
▽助演男優賞＝綾野剛｢リップヴァンウィンクルの花嫁｣｢64‐ロクヨン−｣（2部作）｢怒り｣　
▽助演女優賞＝杉咲花｢湯を沸かすほどの熱い愛｣
▽監督賞＝李相日｢怒り｣
▽新人賞＝岩田剛典｢植物図鑑 運命の恋、ひろいました｣、中野量太監督｢湯を沸かすほどの熱い愛｣
▽特別賞＝｢君の名は。｣新海誠監督、東宝配給