「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019」受賞結果(2019.07.26)
7月13日から開催されていた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019」が21日に閉幕し、国際コンペティションではマッツ・グルードゥ監督作「ザ・タワー」が最優秀作品賞と観客賞をW受賞。また、国内コンペティションの優秀作品賞は、長編部門が壺井濯監督作「サクリファイス」、短編部門が宇津野達哉監督作「遠い光」に決定した。
「ザ・タワー」は、70年もの間レバノンのパレスチナ人難民キャンプで暮らす曽祖父と彼を愛する少女の深い絆を軸に、4世代に亘る歴史をクレイアニメと手描きの手法で製作。グルードゥ監督に代わってトロフィーを受け取ったパトリス・ネザン プロデューサーは「これは監督自身が実際に難民キャンプで過ごした子供時代に基づく作品で、難民キャンプで暮らす人々の互いに対する尊敬の念や愛情、ユーモアの感覚などをしっかり描きたいという思いがありました。日本では難民問題は少し縁遠いかもしれませんが、この映画が皆さんに響いたのは、人間性溢れるものであり、描かれている難民キャンプでの彼らの現状に普遍性があるからではないでしょうか」とコメント。また、「サクリファイス」の壷井監督は「(3・11の時)押し寄せる津波に対して出来ることは何も無かったんですが、第2波、第3波とかナイフとか炎に対してはきっと物語で何か守れるものがあると思って、これからもここに参加している若い方たちと一緒に物語で紡いでいきたいと思っています」と語り、「遠い光」の宇津野監督は「普段は映画やドラマのメイキングや助監督として活動しているのですが、これからは監督として、長編制作や商業デビュー出来るよう、一歩ずつ頑張っていきたいと思います」と決意を表明。国際コンペの審査委員長を務めた三池崇史監督は「いずれの作品も素晴らしく、いわゆる新人という方々が作られたとは到底思えない、レベルも技術も志も高い作品ばかりでした。最初戸惑ったのは10本の映画全てジャンルが違うことでしたが、『映画作品に垣根はありません』というようなフリーな感覚、これぞDシネマ映画祭の良さだと思いました」と述べ、国内コンペの審査員長を務めた荻上直子監督も「デジタル化が進んで、クオリティが凄くアップして、このまま劇場でかけられるんじゃないかという作品もいくつかありました。一方で本当に作りたくて仕方ないパッションに満ちた、ほとばしるような映画は近年なかなか見せてもらえていないなと、それがちょっと残念に思います」と明かした。各受賞作品は次のとおり。
【国際コンペティション】
▽最優秀作品賞&観客賞=「ザ・タワー」(ノルウェー、フランス、スウェーデン/マッツ・グルードゥ監督)、▽監督賞=「イリーナ」(ブルガリア/ナデジダ・コセバ監督)、「陰謀のデンマーク」(デンマーク/ウラー・サリム監督)、▽審査員特別賞=「ミッドナイト・トラベラー」(アメリカ、カタール、カナダ、イギリス/ハサン・ファジリ監督)。
【SKIPシティアワード】
▽SKIPシティアワード=「ミは未来のミ」(磯部鉄平監督)。
【国内コンペティション】
[長編部門]▽優秀作品賞=「サクリファイス」(壷井濯監督)、▽観客賞=「おろかもの」(芳賀俊/鈴木祥監督)、[短編部門]▽優秀作品賞=「遠い光」(宇津野達哉監督)、▽観客賞=「歩けない僕らは」(佐藤快磨監督)。