ニュース

今回は本気の覚悟!?宮崎駿監督が「アニメーターになって良かった!」と清々しく引退会見(2013.09.06)

1985年に高畑勲監督と共にアニメ制作会社「スタジオジブリ」を立ち上げ、歴代最高興収304億円を誇る「千と千尋の神隠し」をはじめ、世界からも常に注目されるアニメーションを作り続けてきた宮崎駿監督が9月6日(金)、長編アニメ制作からの引退会見を行った。600人超の取材陣が詰め掛け、海外からも13カ国/地域から記者が参加する熱気に包まれた会場に姿を現した宮崎監督は開口一番「僕は何度も辞めると今まで言って、騒ぎを起こしてきた人間なので、どうせまただろうと思われているんですけど、今回は本気です!」と宣言し、会場は笑いに包まれた。

鈴木敏夫プロデューサーは「始まったものは、必ず終りがくる。僕の立場で言うと、落ちぶれて引退するのはカッコ悪いと思っていましたので、ちょうど今『風立ちぬ』が公開されていて、いろんな方に支持されている時に、こういうことを決めたのは良かったんじゃないかと思っています。今後ジブリはどうなっていくんだろう?と皆さん当然疑問を持たれていると思います。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』の目途も見えて来て、必ず11月23日に公開します。まだ発表できないんですが、来年の夏に向けてもう1本映画を製作しています」とスタジオジブリの存続を明言した。

また、引退を伝えられた時期について鈴木プロデューサーは「風立ちぬ」の初号試写の直後だったと明かし、「今回は本気だなと感じました。(笑)僕自身、『風の谷のナウシカ』から30年、ずっと続いた緊張の糸が少し揺らいだんですよね。若い時なら思い留めようという気持ちが働いたかもしれないけど、本当にご苦労様でしたという気持ちが湧いた。『風立ちぬ』の公開前に発表するとややこしくなると思ったので、公開が一段落した8月5日に社内のスタッフに伝え、9月のあたまに皆さんにも発表しようと思っていた」と経緯を明かす一方で「宮さんは死ぬ間際まで作り続けるという予感もあった」と無念さも滲ませた。

記者からは、今後「風の谷のナウシカ」の続編はあるのか? 監修・脚本といった面で長編に参加することはあるのか? といった質問が次々と飛び出したが、これらの質問を監督は全て否定。「公式引退の辞にも書きましたけど、僕は自由です。やらない自由もある。『崖の上のポニョ』から『風立ちぬ』まで5年掛かって、今から次の作品に取りかかろうとすれば5年じゃ済まない。あと3ヶ月もすれば73になって、それから7年だとすれば80歳になってしまう。83歳でも背筋を伸ばして活動されている半藤一利さんのように、続けられたらとは思いますが、僕の長編アニメーションの時代は終わった。またやりたいと言い出しても、年寄りの世迷言だと片付けて欲しい」と決意は固い様子。

また、これまでを振り返り「監督になって良かったと思ったことは無いけど、アニメーターになって良かったと思う瞬間は何度もあります。何でもないカットでも、風や光の差し方が上手く描けた時は幸せを感じる。アニメーターという職業が自分には合っていたと思う。監督になろうなんて思っていなかったので、パク(高畑)さんに助けられたし、音楽のこととかも分からず、とんちんかんなこともしてきた僕を(鈴木)プロデューサーが大変助けてくれました。こういうチームがあったから続けてこられた」と感謝の意を表した。

最後の作品となった『風立ちぬ』の製作現場では、嬉しい出来事もあったようで「それぞれのポジションの責任者が、今までに無いような円満な気持ちで仕事を終えられたのが良かった。僕のお通夜に集まってくれたかのように、20年、30年ぶりのスタッフも来てくれて、良い体制で終われたことが良かったと思う」と満足の表情。

健康面については「いろいろ問題はある」としながらも、「仕事を始めた当時は57キロで、結婚してから70キロになり、その頃の写真を見ると醜いブタのよう(笑)。今は外食を止めて63キロ。カミさんには(スタジオには今後も通い続けるので)『お弁当はよろしく』と伝えたけど、『フン。この年になって毎日お弁当を作っている人はいないわよ』と言われてしまった」と夫人には頭が上がらないエピソードも明かした。

また、常に子供たちのために作品を作り続けてきたことについては、「児童文学に影響を受けて、この世界に入ったので、子供たちには“この世は生きるに値する”ということを伝えたい、その根幹はずっと変わらない。僕は文化人にはなりたくなくて、僕が何かを発信しているのではなく、本や昔の映画から受け継いだものが形になっているんだと思う」と語り、今後やりたいことについてはジブリ美術館での仕事と明かし、「色褪せてしまった絵がある部屋に入ると、全体がくすんで見えてしまっている。一箇所だけでも描き直すと、そこだけがキラキラと光って、子供たちもそこに集まってくるんですよね。美術館はずっと手をかけ続けていかないといけないと思っています。ボランティアという形かもしれないし、自分が展示物になってしまうかもしれない」と冗談めかして笑った。

先輩である高畑勲監督には「会見に一緒に出ないか?」と誘ったそうで、「冗談じゃない!という顔をしていました。彼はずっとやるんだなと思った」と羨望し、今後のジブリについては「上の重しが無くなるのだから、若い人たちから鈴木さんに『こういうものをやろう!』という声が届けばいい。やってやろう!という気持ちがあるかが大切。これからはいろんな人の意欲、能力、希望にかかってくるんだと思う」と力強く若いスタッフたちにエールを送った。

公開情報 東宝配給「風立ちぬ」は現在公開中
公式サイト:http://kazetachinu.jp/

バックナンバー

ページのトップへ