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原点は宮崎監督と手掛けた「ハイジ」!高畑勲監督最新作「かぐや姫の物語」中間報告会見(2013.09.17)

最後の長編作品「風立ちぬ」が興収100億円を突破した宮崎駿監督が師匠と仰ぐ高畑勲監督の最新作「かぐや姫の物語」の中間報告会見が9月17日(月)に行われ、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと次世代のジブリを担う西村義明プロデューサー、そして主人公・かぐや姫の役をオーディションで射止めた朝倉あきが登壇。先週、完成したばかりの約6分間にわたるプロモーション映像も初披露され、西村プロデューサーは「高畑さんも深夜2時までのハードワークで頑張っています!あと2週間で残り3分の1の色付け作業をして仕上げます!」と完成に向けて猛作業中であることを明かした。

鈴木プロデューサーは冒頭、引退発表した宮崎駿監督が「一生分の記者会見をした」と言っていることを明かし、「毎日、会社に出てきてウロウロしています」と宮崎監督の近況を報告しつつも「今日は『かぐや姫の物語』の会見なので、ヒロインのあきちゃんを呼びたいと思います」と朝倉を紹介。「僕が『かぐや姫』の企画はどうか?と高畑さんに言ったのが2005年なんですよね。その時、あきちゃんはいくつ?」と聞くと、「今年22歳なので、14歳です」と答え、「えー、中学生だよね!僕が西村に『高畑さんを手伝って』と言ったのが2006年で、西村は仕事の傍ら、恋をして、結婚して、子供を2人作ってるのよ。オレは本当は映画を作って欲しかったけどね」と揶揄しつつも「高畑さんは元々ネバリにネバってとことんやる人だから。西村も苦労したよね」と労った。

オーディションで朝倉を抜擢した理由について西村プロデューサーは「4年半かかって30分の絵コンテしかできなくて、高畑さんもアニメーターもかぐや姫のイメージが湧かないということだったので、先に声を取ったらどうでしょう?と提案しました。でも集めた参考資料から高畑さんは『受け身の声が多い。自分の意思を持った声がない』とおっしゃるので、2011年にオーディションを行いました。2日目の最後の方に朝倉さんが来て、それまで首をタテに振らなかった高畑さんが初めて僕の方を見たんですよ。彼女なら可能性がある。ワガママで意思を持った女性の声だと」。これを受け朝倉は「幼稚園の頃は男の子も泣かせるくらいだったんですが、小学校に入ってからは鳴りを潜めて、自分ではそういう部分が無くなっていると思ってました。実はオーディションの時ボロボロで、泣きながら帰ったのですが、高畑さんには『悲しみ方が良かった』と言われてしまって」と本人としてはやや不本意だった様子。しかしプレスコから2年経ち、アフレコに臨んでいることについては「絵コンテを見て声を入れた時は、どういう人物か想像しながらやっていたのですが、今は映像を見てリアルに感じることができて、かぐや姫の悲しい部分が自分の中に入ってきました」と語り、そんな朝倉を鈴木プロデューサーは「『私は誰のものにもならない!』ってセリフ、良かったよ!」と激励。

また、鈴木プロデューサーは「『竹取物語』はすごく短い物語なので、高畑さんが考えたのは、かぐや姫がどんな気持ちだったかをちゃんと描けば映画になるということでした。地上にいるのは3年半くらいで、結局、月に帰らなければいけない。でも本当に帰りたかったのか?多分、帰りたくなかったんじゃないか。その悔しさみたいなのを描いた」と明かし、朝倉には高畑監督が手掛けた「アルプスの少女ハイジ」を見ておくといいと勧め、その理由について「『ハイジ』も元々18ページくらいの短い物語で、それを毎週30分ずつ、1年で50本のTVシリーズにするために高畑さんはハイジが『どう思ったのか?』を描いてるんですよ」と語り、「『かぐや姫』の製作が遅れていて、宮さんも心配していたので、『物語はそのままで、かぐや姫の気持ちを描いている』と説明したら顔色を変えて、『それはハイジをやろうとしてるんだよ!』と言ってね。2人が一緒に『ハイジ』を作っていた時、宮さんが高畑さんに『いつの日か、日本を舞台にしたハイジを作ってみたいですね』と言っていたらしいので、すごい喜んでね」と宮崎監督が興奮していたエピソードを明かし、さらに「かぐや姫がよちよち歩くシーンを見て、『パクさんすごいね』って素直に評価していて、あんなことは初めてで、宮さんも大人になったなと感じました」と笑った。

この日は朝倉以外の声優陣も発表され、かぐや姫の幼馴染・捨丸に高良健吾、育ての父・翁と育ての母・媼に地井武男と宮本信子、この他、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、浅丘雪路、仲代達矢と錚々たる面々。本作が遺作となった地井武男について朝倉は「とにかく温かい人で、包み込んで受け止めてくださいました。翁に泣いてすがられるシーンでは、心をむき出しにされてしまって、泣き崩れてしまいました。演技にかける意気込みを肌で感じて、一瞬でもご一緒できて嬉しかった」と振り返った。

最後に西村プロデューサーは「宮崎監督は少年が大空に憧れる映画を作り、高畑監督は少女が大地に憧れる映画を作り、全く対照的な作品を作っているようで、本質的なところは一緒なんじゃないかと思っています。高畑監督は、これが最後とも最高傑作とも言っていませんが、現場の人間は誰もが『最後で最高傑作』と確信しています」と自信を覗かせた。

公開
情報
東宝配給「かぐや姫の物語」は2013年11月23日(土)から全国公開
公式サイト:http://kaguyahime-monogatari.jp/

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