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短い作品からドキュメンタリーに親しんで欲しい!「山形国際ドキュメンタリー映画祭2015」会見(2015.09.10)

10月8日(木)から15日(木)まで開催される「山形国際ドキュメンタリー映画祭2015」の東京記者会見が9月10日(木)に行われた。1989年から隔年で開催されてきた本映画祭は、今年で14回目を迎え、インターナショナル・コンペティション部門は116の国と地域から1196本の応募があり、15作品が決定。アジア千波万波部門も59の地域から678本の応募があり、18作品が決定した。なお、今年はブラジルと日本の外交樹立120周年となり、ラテンアメリカの特集などでブラジル映画が上映されることから、会見もブラジル大使館で行われた。

オープニング作品には、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が1982年に製作した「訪問、あるいは記憶、そして告白」に決定。今年4月に逝去するまで、リスボンのシネマテークに保管されていたオリヴェイラ監督の遺言とも言える作品で、自らの家、家族の歴史、人生を監督自身が振り返っている。

インターナショナル・コンペティションでは、今回で3回目の参加となるブラジルのマリア・アウグスタ・ラモス監督の「6月の取引」や、これまで本映画祭で受賞歴のあるパトリシオ・グスマン監督の「真珠のボタン」、ヘルマン・クラル監督の「ラスト・タンゴ」、続々と作品が劇場公開されているペドロ・コスタ監督「ホース・マネー」などがラインナップされた。

〈ラテンアメリカ‐人々とその時間:記憶、情熱、労働と人生〉と題したラテンアメリカ特集では、1960年代に新しい映画の形式として模索され、数々の伝説的な作家を輩出した“第三の映画/サード・シネマ”に迫り、パトリシオ・グスマン監督の「チリの闘い‐武器なき民の争闘 三部作」、オクタビオ・ヘティノ&フェルナンド・ソラナス監督の「燃えたぎる時」など、ほぼ全てが日本初上映となる31作品を上映する。

映画祭事務局長の濱治佳氏は「ラテンアメリカの各大使館に挨拶に行った際に、特にブラジル大使館は映画祭を通してブラジル映画が日本に紹介されることに積極的でした。ラテンアメリカの中でも唯一ポルトガル語圏であり、他国とは違う文化や歴史があります。経済も上向き、ワールド・カップやオリンピック開催など、遠い国ではありますが、我々にも降りかかってきていることがシンクロしているようにも感じたので、ブラジルのドキュメンタリーを皆さんに紹介できればと思いました」と明かした。

また、東日本大震災の起きた2011年から続いているプログラム〈ともにある Cinema with Us 2015〉は今回で3回目を向かえ、新たに発表された作品を中心とした上映と、震災と映画をめぐるディスカッションを行う。なお、昨年末には「311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ」も立ち上がり、ゆっくりとではあるが山形は映画を通じて震災に向き合う場となってきている。

この他、ロバート・フランク、是枝裕和監督らの作品を上映する〈Double Shadows/二重の影‐映画が映画を映すとき〉、“アラブの春”以降の変わりゆくアラブ世界に真摯に向き合った新作などを上映する〈アラブをみる‐ほどけゆく世界を生きるために〉などのプログラムの他、〈映画批評ワークショップ〉、〈国際交流基金アジアセンター共催企画〉なども行われる。

ドキュメンタリー映画というとどこかとっつきにくいイメージもあるが、インターナショナル・コンペティションの審査員を務める牧野貴氏は「ドキュメンタリーは扱っているテーマが大きければ大きいほど、見ている方が辛くなることもありますが、複数の作品を観ていくと、自分にとっての新たな発見があるので、この映画祭でドキュメンタリーを観るのは面白い体験になると思います」とコメント。

〈ともにある Cinema with Us 2015〉のコーディネーターを務める小川直人氏も「出来るだけ上映時間が短いものを観るといいと思います(笑)。興味や関心を越えて、長時間のものは体にもくるので。まずは短いものを観るのが僕のオススメです」とPRした。なお、映画祭上映期間中は、世界各地からゲストが来日し、観客との対面トークなどを行う他、スペシャル・ライブとして、ラテンアメリカとアラブから2組のミュージシャンが来日し、熱いステージを繰り広げる。

開催情報 2015年10月8日(木)〜15日(木)山形市中央公民館(アズ七日町)、山形市民会館、フォーラム山形、山形美術館、他で開催。
公式サイト:http://www.yidff.jp/home.html

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