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マーティン・スコセッシ監督は情熱メラメラなお人!「沈黙−サイレンス−」来日記者会見(2016.10.19)

マーティン・スコセッシ監督が戦後日本文学の金字塔とされる遠藤周作の「沈黙」を完全映画化した「沈黙−サイレンス−」の来日記者会見が10月19日(水)に行われ、スコセッシ監督をはじめ、出演の窪塚洋介、浅野忠信が登壇した。会見冒頭には15分間に亘り劇中から切り取った4つのシーンが特別フッテージ映像として初披露され、スコセッシ監督は「日本の文化から多大な影響を受けてきました。溝口健二の『雨月物語』を14歳の頃に観て、日本という国に初めて触れ、カトリックの家庭で育ったことから遠藤周作の作品も愛読してきました。『沈黙』は文化の違いや衝突がテーマとなっている作品で、語り尽くせないほど話したいことが沢山あります。とにかく皆さんに映画をご覧いただきたい」と挨拶した。

江戸時代初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、ポルトガルから日本に辿り着いた宣教師のロドリゴの目に映ったのは想像を絶する日本だった。ロドリゴは信仰を貫くか、棄教し信者たちの命を救うか、究極の選択を迫られる。遠藤周作没後20年、「沈黙」刊行50年という節目の今年、スコセッシ監督が「人間にとって本当に大切なものは何か」を描き出しており、アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーらに加え、日本から窪塚洋介、浅野忠信の他、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシが集結している。

オーディションにより物語の重要人物となるキチジロー役を勝ち取った窪塚は「(役が)決まった時は狐につままれたようで、ドッキリなんじゃないかと思ったのですが、撮影を終え、こうしてこの場に立って、ようやく本当だったのだと実感しています。夢のような時間と最高の経験をさせてもらい、僕も完成を心待ちにしています。楽しんで観て下さいと言えるような作品ではないですが、皆さんの心に残るものがあればいい」と熱くコメント。

海外作品には数多く参加してきている浅野も「オーディションで監督と初めてお会いしたのですが、オーディション自体が本当に面白かったんです。互いに心で感じる瞬間みたいなものがあって、僕ら役者から溢れ出るものを監督は期待して待ってくれていると感じました。フィルムで撮影したのも嬉しくて、監督にとっても重要なことだったのではないかと思います。フィルムでしか観られない何かがあると僕も思っていました」と明かした。

28年前、キリストを題材にした「最後の誘惑」を撮影していた時に「沈黙」に出会い、日本で黒澤明監督の「夢」に出演していた時に読み終えたというスコセッシ監督は、作品との縁を感じていたようで、「この精神世界を作品として追求する上で、どうアプローチしていいか、当時はわかりませんでした。2006年にようやく脚本を書き終え、その間に私も夫になり、父になり、フィルムの修復事業などにも取り組み、『沈黙』と共に成長してきたと思っています。ただ長い年月がかかり、権利関係も複雑になってしまい、諦めた方がいいと言われたこともありましたが、助けて下さる人々もいて、映像化にこぎつけることができました」と感慨もひとしおの様子。

窪塚と浅野のキャスティングについては、「オーディションを終えた時点で、キチジローと通訳の役が決まっていなかったのですが、洋介がキチジローを演じているビデオを見せられ、力強く演じているだけでなく、心から正直に演じていて、役を理解していると感じました。2014年に東京で会った際に演技を見せてくれて、『この人だ!』と決めました。浅野さんもキチジロー役でオーディションを受けていたのですが、彼の出演した『モンゴル』や『アカルイミライ』『殺し屋1』など観ていたので、通訳にしたらどうだろう?とキャスティングディレクターに話し、パーフェクトな選択だったと思っています」と明かした。

ハリウッド初進出となった窪塚は初日から衝撃を受けたようで、「監督が綺麗なスーツ姿で現われたんですが、薄汚れた酒場での撮影で、そのスーツのまま『こんな感じで演じて』みたいに下に座ってしまったんです。『あー!スーツが汚れちゃう!』と思ったんですが、監督には関係ないんだなと。映画への情熱の氷山の一角というか、メラメラなお人なんだと思いました」と独特の表現でスコセッシ監督を称え、監督も照れくさそうに「アリガトウゴザイマス」と応えていた。

公開情報 KADOKAWA配給「沈黙−サイレンス−」は2017年1月21日全国公開
公式サイト:http://chinmoku.jp/

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