辺見じゅんのノンフィクション小説｢収容所（ラーゲリ）から来た遺書｣を映画化した｢ラーゲリより愛を込めて｣の完成報告会見が8月17日（水）に行われ、瀬々敬久監督、平野隆プロデューサー、ラーゲリで一筋の希望の光となる主人公・山本幡男を演じた二宮和也、時代に翻弄されながらも愛する夫を信じて待ち続ける妻・モジミ役の北川景子が登壇。そして山本と共に極限のラーゲリを生き抜く捕虜仲間として、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕の出演が発表され、山本の長男・顕一の壮年期を、93年放送のTVドラマ｢収容所から来た遺書｣で山本幡男役を演じていた寺尾聰が演じていることも明らかとなった。

第二次世界大戦終了後、シベリアの強制収容所（ラーゲリ）へ不当に抑留され、捕虜となった山本幡男。劣悪な環境により栄養失調で死に逝く者や自ら命を絶つ者、さらには日本人捕虜同士の争いも絶えない中、｢生きる希望を捨ててはいけません。帰国（ダモイ）の日は必ずやって来ます｣と仲間たちを励まし続け、捕虜たちの心に希望の火を灯した山本の壮絶な半生を描き出す。なお、主題歌はMrs. GREEN APPLE が歌う｢Soranji｣に決定した。

平野プロデューサーは｢この映画を作りたいと思ったのはコロナ禍前で、社会全体が窮屈で息苦しく、生きづらい時代になってきたと感じていた時に山本さんの生き方と出会い、極限状態でも人間らしく生きようとする姿に心を打たれました。ロシアによるウクライナ侵攻でますます閉塞感が増す時代に、この映画を皆さんにお届け出来るのは運命のようで、作品を観て希望を見出していただけたら幸せ｣と熱く製作経緯を明かした。

瀬々監督も｢この映画を作る前はウクライナで戦争が起こるとは思いもせず、戦争が身近になる中で完成し、皆さんに観ていただく意味を感じている。スタッフ、キャストのお陰で、いい映画になったと思う｣とコメント。二宮は｢嵐の活動がひと段落してから参加させていただいたが、ここにいるメンバーだけでなく、収容所のみんながそれぞれの考えを持って、ベストパフォーマンスで演じているのを見ていただけたら｣と挨拶。

北川は｢昨日観させていただいて、どんな状況でも人は懸命に生きることが大切なんだ、自分が思う人、思ってくれる人の愛により突き動かされ、生かされているんだと感じ、今も余韻に浸っています｣と明かした。戦禍で友人を亡くしたトラウマから自身を卑怯者と思い悩む松田研三を演じた松坂は｢戦争後に終わっていない戦争が11年も続いたことが衝撃的で、改めて、この時代に生きる人たちに彼らの思いを届けたいと思いました｣と語った。

最年少でムードメーカーの新谷健雄役の中島は｢心から尊敬する役者であり先輩である二宮さんの大作の一部になれて幸せ。これから未来を引っ張っていく人々に継承していかなければならない物語だと感じました｣とし、昔ながらの帝国軍人として山本に厳しくあたる相沢光男役の桐谷は｢こうして皆でスーツ姿で登壇しているのが奇跡のようで、当たり前の日々が本当に幸せだと感じられる作品です。参加できたことに感謝しています｣とコメント。

過酷な状況下で心を閉ざしてしまう山本の同郷の先輩・原幸彦役の安田は｢脚本を拝読して心が震えました。感想を求められても気持ちが溢れてしまいそうで言葉にできず、普遍的な心の奥底からの愛を描いていると感じました｣と明かした。収容所で懸命に生き抜く男性陣の芝居を観た北川は｢この方々のように私は心が豊かだろうか？と思いましたし、人間は辛くても手を取り合うことができる、私も頑張ろうと思えました｣と感銘を受けた様子。

雪に苦労することもあったようで、二宮は｢野球のシーンの前の日に大雪の予報が出て、朝から収容所チームが駆り出されて、雪をどかしたんですが、それがやりたくなくて・・・部屋の隅っこで居ないフリをしていました｣と明かすと、桐谷から｢俺と健人はやったよ！｣とツッコまれ、｢芝居を作っていたんだよ｣と釈明。松坂も｢ものすごい積もった日も撮影しなければならなくて、それが逆に良かった。映画の神様が味方してくれました｣とコメント。

また、中島は人生初の丸刈りにした時のことを｢衝撃でした｣と語り、｢二宮先輩が丸刈りの先駆者なので、僕も後継者としてそのヘアスタイルができて光栄でした｣と語ると、二宮は｢楽しい映画ではないのですが、（中島演じる）新ちゃんが出てくると、映画の重さを少し軽くしてくれていました｣と感謝。そして二宮は｢辛くて、悲しくて、目を背けたくなるような場面もありますが、人間にとって大切なものが見えてくる映画だと思いますので、12月9日の公開までよろしくお願いします｣と締めくくった。