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第38回藤本賞授賞式開催、「万引き家族」の是枝裕和監督が受賞(2019.05.31)

生涯で269作品を製作した映画プロデューサーの藤本真澄氏の功績を称え、その年に著しい活躍をした映画製作者を中心に表彰する「第38回藤本賞」の授賞式が5月31日(金)に行われた。昨年、カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督が本年度の藤本賞を受賞し、特別賞には「翔んで埼玉」を製作した若松央樹氏、奨励賞には「劇場版コード・ブルー−ドクターヘリ緊急救命−」を製作した増本淳氏、新人賞には「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督が輝いた。

「万引き家族」の是枝監督には「実際にあった事件から発想したオリジナル脚本を、閉塞感を増す現代日本を背景に、犯罪でしか繋がれなかった血の繋がらない疑似家族の、家族を超えた絆を描くドラマとして映画化、カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール他、海外での圧倒的な評価を得、日本でも幅広い観客層による興行的な成功も収めた同作を監督した」その功績に対して藤本賞が授与された。

是枝監督は「プロデューサーのための賞なので、監督が貰うのは居心地が悪かったんですが、三谷(幸喜)さんも貰っているということで(笑)、プロデューサーチーム、『万引き家族』チームを代表してありがたくいただきます」と照れ笑い。「ようやくこの5年で互いに気心が知れたチームで映画を作る環境ができ、監督だけでは映画は出来ないと改めて感じています。『万引き家族』は当たらなくてもいいかなという思いもあり、制作費もかけず、やりたいことをやろう!とスタートしたのに、ゴールがこんな(すごい)ことになって、映画って不思議な生まれ方と育ち方をするものだなと思いました」とコメント。

さらに「藤本賞に最初に呼んでいただいたのは、2008年の『歩いても歩いても』の時で、プロデューサーの安田匡裕さんが3月に亡くなられて、代理で僕が出席しました。安田さんは映画を作る度に赤字になっても、オリジナルで作る面白さと尊さを教えてくれた人で、賞とは無縁な人でしたが、初めて彼が評価された藤本賞で、今は僕がこんな風にヒット作も作れるようになった姿を見せられないのが残念です。墓前に報告に行けたらと思っています。ありがとうございました」と感慨深げにスピーチした。

「翔んで埼玉」で特別賞を受賞した若松氏は、埼玉県をディスる内容ながら70万人もの埼玉の人々(人口の10人に1人)が鑑賞してくれたことに感謝を示し、「まさかまさかの幸運が続いた作品で、企画が通ったことも、GACKTさんが高校生役を引き受けて下さったことも、千葉との合戦シーンでは著名な方々が写真を貸して下さったことも、そしてまさかの大ヒットに極めつけは藤本賞ということで、こんな映画で良かった?という思いもありますが、素晴らしい賞を励みにますますバカバカしい作品を作るべく、精進して参ります」と笑顔を見せた。

昨年の邦画1位となる93億円を記録した「コード・ブルー」を手掛けた増本氏は「『絶対に当てろ!』という空気が凄くて、当初目標の40億円からどんどん上方修正されていく度に、お腹の痛い状態でした(笑)。2007年にドクターヘリの取材を始めた頃は、どうなるかもわからない状態でしたが、時間を与えてくれて、いつか面白いものが出来ると期待してくれたフジテレビに感謝しています。自分が興味を持った題材をじっくりとドラマにし、映画にもできるということをフジテレビと東宝さんが示してくれました。これからも高い意識をもって挑戦していけたらと思います」と更なる躍進を誓った。

また、「カメラを止めるな!」が社会現象を巻き起こした上田監督は、新作撮影のクランクアップ当日ということで、代理としてENBUゼミナールの市橋浩治プロデューサーが登壇し、「『カメ止め』は感染者と呼んでいるお客様たちに支えられた映画です。宣伝費も無い中、2館でスタートして、上田監督が先頭に立って皆で頑張った成果を、業界の皆さんが評価して下さり、マスコミが行列の出来る映画として取り上げて下さいました。インディーズの映画でも面白い作品があると、知っていただけたことも嬉しいです」と述べた。

公開情報 公式サイト:http://www.eibunkyo.jp/fujimoto.html

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