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若松監督からのインディー精神受け継ぐ井上監督デビュー作!「戦争と一人の女」完成報告会見(2013.03.20)

大学時代から故・若松孝二監督に弟子入りし、「アジアの純真」の脚本で注目を浴びた井上淳一監督の本格的長編デビュー作「戦争と一人の女」の完成報告会見が3月19日(火)に行われた。戦争に翻弄される男と女を体当たりで演じた江口のりこ、永瀬正敏、村上淳をはじめ、寺脇研プロデューサー、脚本の荒井晴彦、井上淳一監督が登壇。「この作品をやりたい」という思いだけで集結したスタッフとキャストということもあり、それぞれが「一人でも多くの人に劇場で観て欲しい」と挨拶した。
自分の欲望に忠実に生きる元娼婦の呑み屋の女将と、戦争に絶望した飲んだくれの作家。そこに中国戦線で片腕を失い、戦争を十字架のように背負った帰還兵が絡む。女と作家はただひたすらに体を重ね、帰還兵は自らが戦争の不条理と化し、何の罪もない女を犯し続ける。坂口安吾の原作を基にした本作は、「決して口当たりのいい映画ではありません。エロスとバイオレンスに満ち溢れ、レイプもあります。被害者は加害者になり、加害者は被害者になる」と井上監督も語るとおり、日本映画が封印してきたタブーに果敢に挑んでいる。
「戦争が好き」と一種、狂気に満ちた女を演じた主演の江口は「とにかく共演者とスタッフに恵まれ、充実した日々を過ごすことができました。心強い人たちばっかりだったので、ストレスだったり、よく分からない不安だったりはありませんでした」と語り、デビューから30周年を迎えた永瀬は「僕みたいな役者を30年も使ってくださった映画界に感謝。30年目の最初の作品がこの映画で光栄に思っています」としみじみと語った。また、1日に3人もレイプするシーンを演じなければならなかったという村上は「低予算でスケジュールがタイトだったので。凄い日だったなというのは忘れられません」と過酷な現場だったことを明かした。

若松プロで経験を積んできた井上監督は意外にも「演出という面では勉強にならなかったです。若松さんは戦争映画でも電柱が映っていようが平気な人なので。逆にこういうことではダメだとは思いました」と明かしたが「そういう具体よりも、自分の金で、自分の責任において、自分の伝えたいものを撮るんだというインディペンデント作家としての影響は受けたと思います。映画学校とかでは『映画は何をどう描くかだ』と言ったりしますが、『どう』は教えられるけど、『何』は教えられない。そのなかなか伝えられにくい『何』を学んだ気はします。ただ『どう』の方で言えば、プロデューサーから『おまえ、若松さんに似てるな』と言われ、愕然としました」と苦笑いした。
脚本の荒井も「若松組と『キャタピラー』みたいな映画だけは作るまいと、同じくらいの規模で戦争と裸を描き、同じような映画で批判してやろうと思って作りました」と語り、寺脇プロデューサーは「若松監督の『キャタピラー』に敬意は持ちつつ、違うものを作りたいというのはあった。このくらいの規模で撮影所を使うことはあまり無いのですが、京都の松竹撮影所で撮影し、インディペンデント映画と撮影所を掛け合わせるとこういう映画ができるというのを是非、見て欲しいと思います」と語った。
また、寺脇プロデューサーは「いろんな方に観ていただいて、レイプシーンは確かに女性として観るのはつらいと言われることもありましたが、逆にきちんとやっていただいて素晴らしいという意見もあった。今でもこういう犯罪は起こっているということが伝わるということですね」と語り、村上も「ひどいことはひどいと荒井さんがガチンコで書いて下さった本なので、中途半端にやってもしょうがなかった」と明かした。
本作は、今年の「あきた十文字映画祭」や「大阪アジアン映画祭」等でも上映されており、公開後は東京だけではなく、全国20館を超える規模での上映を予定。また、海外でも韓国の「チョンジュ映画祭」への出品が決定している。

公開情報 ドッグシュガームービーズ配給「戦争と一人の女」は2013年4月27日(土)からテアトル新宿で公開
公式サイト:http://www.dogsugar.co.jp/sensou

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