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天上からたくさんの仲間が見守ってくれて出来た作品「ゆずり葉の頃」完成報告会見(2015.04.16)

長年、夫の岡本喜八監督作品をプロデューサーとして支えてきた岡本みね子が、岡本監督逝去から10年たち、脚本家をめざしていた頃の旧姓、中みね子として76歳で監督に挑戦した「ゆずり葉の頃」の完成報告会見が、4月16日(木)に行われ、主演の八千草薫をはじめ、仲代達矢、風間トオル、音楽担当の山下洋輔氏、劇中画を担当した宮廻正明氏、中みね子監督が登壇。脚本も務めた中監督は「この映画は、谷口師匠、喜八監督と天上からたくさんの仲間が見守ってくれてできた作品です」と挨拶した。

着物の仕立てをしながら一人で暮らす市子は、少女の頃に思いを寄せていた宮謙一郎が、今では国際的な画家となり、軽井沢で個展が開かれるという記事を目にする。思い出の一枚の絵を求めて、軽井沢へと旅立った市子を心配して、海外勤務から戻った息子の進も後を追う。軽井沢で人のぬくもりに触れ、市子の心は優しくほどけていき、思いがけない出逢いが訪れるのだった。

会見は、音楽を担当した山下洋輔氏の美しい旋律が印象的な主題曲のジャズピアノ演奏で幕を開けた。監督から「ジャズはやるな。ピアノ1本で」と依頼されたという山下氏は「ラッシュを見ながら、場面に合わせて即興演奏して曲を作りました。ジャズはやるなと言われたけど、龍神が湖に深く降りて行くイメージのところで、ここなら出来るなと思って、結局やってしまった。監督には『やっぱりやったわね』と読まれていて、流石です。ですから、やり残した事はないです」と明かした。

ピアノの前には、劇中画の「原風景」が立てかけられ、本作のためにこの「原風景」と「龍神」の2作を新たに描いたという宮廻正明氏は「監督のリクエストどおりに描いた絵です。いつもは自分の好きなように描いているので、こういう描き方もあるんだなと学ばせてもらいました」と語った。

数年前に中監督から「一緒に映画を撮らないか」と言われたのがきっかけだという主演の八千草は「試写を観て、とうとう出来たと感無量です。その人その人に合った役柄を作って頂き、気持ちよく役に入れたし、幸せでした」と語り、相手役の盲目の宮画伯を演じた仲代は「八千草さんは初々しくて品格がある、素晴らしかった」と言い切った。

岡本喜八・みね子夫妻には、公私共にお世話になっていたという仲代は「役者を続けていられるのはおふたりのおかげ。台本を頂いた時、中みね子となっていて、どうしたのかと思った。どうして岡本みね子と出さなかったのですか?」と質問し、監督が「すみません」と恐縮する場面も。すかさず、仲代は「素晴らしい映画です。この作品は岡本喜八監督に捧げたい」と熱く語った。

進役の風間トオルは「時の流れ方が細かくてフランス映画を観ているような不思議な映画です。セリフが少なく、眼や手の動きで癒されるような。モスクワ映画祭に同行させてもらった時、向こうの方にも眼でみてわかると感動して頂き、絶賛されて嬉しかった」とコメント。

タイトルになっている“ゆずり葉”は、若葉が芽吹いた後、役目を終え譲るように落葉するという。その“ゆずり葉”にたとえ、譲れないものを尋ねられると、考え込んでしまった風間に「あなた自身を譲れないものにしなくちゃ、最後まで風間トオルとしてお仕事してもらいたい」と、お母さん代わりだという中監督から助け舟が出された。その後も仲代については「年齢に関係なく、色気がある素敵な男優さんでいて欲しい」、八千草には「日本女性が持っている優しさと強さを持ち続けている方、持ち続けて欲しい」と温かい言葉が寄せられた。

最後に「素晴らしい大人の方々と一緒に仕事ができて、胸がいっぱいです。平均年齢は高いですが、是非、若い方にも観て頂きたい」と中監督が締めくくり、会見は終了した。

公開情報 パンドラ配給「ゆずり葉の頃」は2015年5月23日岩波ホールほか公開
公式サイト:http://yuzurihanokoro.com/

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