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阪本順治監督がチェ・ゲバラと共に戦った日系人の姿を描く日本・キューバ合作「エルネスト」日本記者クラブ会見(2017.08.23)

キューバ革命の英雄であるエルネスト・チェ・ゲバラの“意志”を継いだ実在の日系人、フレディ前村ウルタードの知られざる生涯を日本・キューバ合作で描いた「エルネスト」の阪本順治監督が日本記者クラブでの試写会を前に8月23日(水)、記者会見を行った。阪本監督は本作の主人公に据えたフレディ前村ウルタードについて「ゲリラとして戦っていた戦士というよりも、名も無き医学生が、どういうキャンパスライフを経て、ゲバラと共に戦うことになったのか、恋愛も含めて学生生活を中心に描こうと思いました」と明かした。

今年、没後50年を迎えるエルネスト・チェ・ゲバラは、革命家、反帝国主義のカリスマ、そして革新を想起させるシンボルとして今もなお息づいている。そんなゲバラに共感してボリビア戦線に身を投じ、1967年8月に25歳の若さで亡くなったフレディ前村ウルタードをオダギリジョーが演じ、阪本監督とは「この世の外へ クラブ進駐軍」「人類資金」に続き3度目のタッグを組んだ。ゲバラ役には写真家でもあるキューバの俳優ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、広島来訪時のゲバラを唯一取材した森記者役に永山絢斗が扮している。

新聞部に所属していた大学時代からゲバラには興味を持っていたという阪本監督は「今でもゲバラのTシャツを着ている若者がいるくらい、そのビジュアルとカリスマ性を含め、チェ・ゲバラという人物は広く知られていますが、若い人たちにしてみれば、何をした人物なのか知らない人も多いと思う」とし、「2013年にある映画の企画のため脚本を書いていた時、登場人物の一人を日系移民の設定にしたんです。それでペルーやボリビアの日系人について調べていたところ、フレディという人物がボリビア戦線でゲバラと共に戦っていたことを知りました」と本作を製作するきっかけになったことを明かした。

「ボリビアでは特権階級しか医療が受けられず、フレディは医療改革をするために医師を目指していたんですが、若い頃から“行動に出る”タイプの人で、17歳の時に警察に拘束されました。そのため大学への進学が許されず、留学生を受け入れていたキューバに渡ります。今はハバナ大学の学長や医学部長になっているフレディの当時の学友の方々や家族、ゲバラの息子さんからも話を聞き、まるでフィクションのようなエピソードを映画にも盛り込んでいます」と、監督自らがキューバに飛んで取材やリサーチを重ねたという。

また、キューバには民間のプロダクションが無く、国の機構と組まなければ不可能であった“日本とキューバの合作”という難題をクリア。日本人がキューバでゲバラやフレディの映画を撮るということに関して現地の人々は「違和感はない」と監督に話したそうで、「あの時代を描いた映画自体がキューバには無いから、キューバ人にとっての映画でもあると言ってくれました」と明かした。さらに、キューバ人スタッフ100人、日本人スタッフ27人という環境の中で、ラテン気質の現地スタッフに救われることも多かったと明かした。

「2014年に企画がスタートしてからの3年の間に、キューバはアメリカとの国交が回復し、オバマも訪れ、今ではトランプ政権との間で人々が不安にかられている姿を見てきた。革命時代を知る人たちは『ケンタッキーもマクドナルドもいらない』と言っているが、若い人たちは『食べてみたい』と言っている。カストロによって多少の格差は生まれているが、国民は役人も医者も等しく貧しいので、誰かから何かを奪おうという気持ちが無いということもわかりました」と現在のキューバについても言及した。

公開情報 キノフィルムズ/木下グループ配給「エルネスト」は2017年10月6日(金)からTOHOシネマズ新宿他全国で公開
公式サイト:http://www.ernesto.jp/

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