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佐藤浩市、渡辺謙共演で福島第一原発の作業員たちを描き出す「Fukushima 50」クランクアップ会見(2019.04.17)

2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災後に福島第一原発に残った名もなき作業員たちの姿を描く「Fukushima 50」のクランクアップ会見が4月17日(水)に行われ、主演の佐藤浩市、共演の渡辺謙、プロデューサーの水上繁雄氏と椿宜和氏が登壇した。佐藤は「人間は忘れなければ生きていけないことと、生きていく上で絶対に忘れてはいけない大事なことがあり、この映画では後者を描いています。劇場の暗がりを出て、街を行き交う人々を見た時、観客の皆さんがどういう思いを抱くかを大事にしながら映画を進めてきました」と挨拶した。

ジャーナリストの門田隆将氏が3.11の関係者90人以上へ取材したノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)を原作に、想像を超える被害をもたらした原発事故の現場で何が起きていたのか?死を覚悟して発電所内に残り、世界のメディアから“Fukushima 50”と呼ばれるようになった職員たちの知られざる真実を、「沈まぬ太陽」など社会派・骨太な作品で定評がある若松節朗監督が描き出す。昨年11月から大規模セットなどを組んで撮影を開始し、4月にクランクアップを迎えた。

水上プロデューサーは「間もなく平成が終わりますが、世界的にも類を見ない東日本大震災の事故を後世に伝えていこうと企画がスタートしました。原発で作業されていた方々はほとんどが福島出身で、“Fukushima 50”と呼ばれるようになり、皆さん悩みながら作業にあたり、胸の中には避難された人々や家族のことがありました。そういった思いを中心に、報道だけでは伝わらなかった内部の様子を描きます。大自然の驚異や人間の慢心が重要なテーマであり、門田氏の原作をリアルに映画化しています」と製作経緯を明かした。

地元・福島出身で現場を指揮する第一原発1・2号機当直長・伊崎利夫を演じた佐藤は「まだ8年なのか、もう8年なのか・・・思いは人それぞれ違うと思います。この映画を衝撃的な印象で振り返ることができる人も、生まれてはいたけれど記憶にはない10代の子どもたちもいるという中で、是か非かではなく、何が必要で何が必要ではないのか、それぞれに感じとっていただきたいと思っています」と想いを吐露。

福島第一原発所所長の吉田昌郎を演じた渡辺は出演を決めた理由について、「ハードルの高い作品になることは間違いないと思いましたが、製作が『沈まぬ太陽』でもご一緒した角川歴彦さんだったので、全てのハードルを乗り越える気持ちで企画されたのだろうと理解しました。『許されざる者』でも佐藤君と共演し、彼の100本目の作品は一緒にやろうと話していたのですが、あっという間に100本を超えてしまっていて(笑)、本作なら約束の答えを出すのに相応しい映画だと思い、一緒にハードルを越えようと思いました」とコメント。

そして椿プロデューサーが、撮影のために再現した大規模セットの写真を見せながら解説。「津波で流された原発の野外セットは長野県諏訪市に作ったのですが、戦場のようで、第1・第2の水素爆発事故当時を思い出しながら撮影していました」と明かし、佐藤も「このセットでの中操(中央制御室)から緊対(緊急対策室)に向かうシーンが初日だったので、自分がどこに向かっていくのか再確認できました」とし、緊対のセットについて渡辺は「ここだけは非常用電源があったので、何も変わらない中でTV画面に流れるニュース映像を見ながらの撮影が続きました」と振りかえった。

また、佐藤は「順撮りで撮影をしていったので、日毎にみんなの顔が変わって、やつれていくのを感じましたし、繋ぎ合わせた映像を見せてもらった時も、役者の技量だけではないものがそこにありました」と語り、渡辺は「一番僕たちが力を発揮できる映画で、福島への恩返しというわけではありませんが、現実がどうだったのかを伝えることができると思いました。時間はかかってしまいましたが『こういう作品をお届けすることができます』とお伝えしたい」と真摯に語った。

水上プロデューサーは「日本映画の潮流のターニングポイントとなる映画を目指しています。こういった事象を後世に伝えるために作品を作るというのは映画製作者の使命と感じ、世界にも発信していくので、ご期待していただければ」と、いまだに原発問題が解決していない日本、そして世界に向けて公開していくことを明かした。

公開情報 松竹/KADOKAWA配給「Fukushima 50」は2020年全国公開
公式サイト:https://www.fukushima50.jp/

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