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「第19回東京フィルメックス」最優秀作品賞は「アイカ」(2018.11.28)

11月17日から有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日比谷他で開催されていた「第19回東京フィルメックス」が11月25日に閉幕。前日の24日には授賞式が行われ、最優秀作品賞にはカザフスタンのセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督による「アイカ(原題)」が輝いた。

【最優秀作品賞】
▽「アイカ(原題)」(ロシア/ドイツ/ポーランド/カザフスタン/中国)=セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督。
▽受賞理由=出産後、新生児を残して病院を逃げた25歳のキルギス人の女性の物語。借金を返そうと様々な仕事に就こうとするが、うまくいかない。本作はこの女性に降りかかる過酷な現実とモスクワで移民として生き抜いて行こうとする彼女の意志を見事に描いている。ドキュメンタリー映画出身の監督は、残酷な境遇を核心的でリアルなやり方で捉えている。各シーンは緊張に満ちていて、観る者の心を打つ。
【審査員特別賞】
▽「轢き殺された羊」(中国)=ペマツェテン監督。
▽受賞理由=「私の夢を教えても、恐らくあなたは忘れるだろう。私が夢に従って行動すれば、あるいはあなたは覚えるかもしれない。ただ、私の夢にあなたを巻き込めば、それはあなたの夢にもなる」。このチベットの箴言に始まるポップな西部劇ロードムービーは、2人ともジンパという名の謎の人物がココシリへと私たちを誘う。一人は復讐のために人殺しを企て、もう一人は誤って殺してしまった羊の済度を求める。息をのむ映像で神秘的でオペラのような夢の如く物語は語られ、チベット語で歌われる「オーソレミオ」で強調される。
【スペシャル・メンション】
▽「夜明け」(日本)=広瀬奈々子監督。
▽受賞理由=本作は見事な脚本と演出により、柳楽優弥が人生を模索する青年を力強く演じるファミリードラマである。この若い女性監督の明晰なデビュー作品は日本映画の未来への一条の明るい光となった。
【学生審査員賞】
▽「ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)」(中国/フランス)=ビー・ガン監督。
▽受賞理由=男と女、2人の究極的な愛は地球の自転にも抗った。男が誰と出会ったのか、本当に出会ったのかさえ不確かだが。ようやく縫い合わせた錆びた記憶の欠片たちと、眠ってしまったのかと錯覚してしまう夢のような一時。「意味」は遥か先に隠され、どこを探しても見つからない。僕らは宇宙からやって来た監督に別世界に別の宇宙に連れ去られた。大冒険は終わったのか、まだ帰ってきているのかも分からない。映画表現へのこの革命的ギャンブルは、新たな扉を叩いただろう。そして、映画に対する確固たる愛と覚悟を見せつけ、僕らの背中も大きく押してくれた。
 この他、観客賞は近浦啓監督の「コンプリシティ」(日本)が受賞した。

(11月26日付 日刊興行通信より)

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