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海老蔵「言葉では言い表せない」思いを胸に父・團十郎と共演「利休にたずねよ」完成報告会見(2013.07.10)

第140回直木賞を受賞した山本兼一の歴史小説を原作に、市川海老蔵が千利休を演じた「利休にたずねよ」の完成報告会見が7月10日(水)に行われ、市川をはじめ、千利休の妻・宗恩を演じた中谷美紀、監督の田中光敏が登壇した。本作は第37回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門に正式出品されることが決定。市川は完成した映画を観て、「良かった、いい映画だと思いました。若い方にも観て欲しい」と挨拶した。

希代の茶人・千利休は太閤・豊臣秀吉の命により、自らの腹に刃を立てようとしていた。死に向かう夫に対して妻の宗恩は「あなた様にはずっと想い人がいらっしゃったのでは・・・」と尋ねる。その言葉が利休の胸中に秘められた、遠い時代の記憶を蘇らせていく。若かりし頃、利休は放蕩の限りを尽くしていたが、ある日、高麗からさらわれてきた美女と出逢い、恋に落ち、事件を引き起こしていたのだった。

市川は「3年半前、『利休をやって頂きたい』と原作者の山本さんからお手紙を頂きました。本を読み、僕ではないなと断ろうと思っていたら、どうしてもお願いしたいと、またお手紙を頂き、名古屋の御園座の稽古場で、山本さんと監督にお会いしたんです。利休と言えば、今まで三船先生や三國さんといった錚錚たる方が演じられてきて、僕は違うと長々と説明しましたが、『パッションだ』と言われて話は進み、その後、東京でプロデューサーも交えてお話して、腹を括って務めよう!と引き受けました」と出演決定までの道のりを語った。

一方、早い段階で原作を読み、映画化される前から関わりたいと望んでいたという中谷は「10代の頃から伊藤園さんのお茶の広告をさせて頂き、私の女優人生はお茶と共にあって、お茶に育てられてきました。お茶が身近にあったことから茶道にも興味を示すようになり、そんな中で原作を読みました。平成の狼藉者・海老蔵さんが利休を演じるということで、反対する意見も周囲にあったのですが、オファーを頂いて、困難であろうとも演じてみせる、良い作品にしてみせると申してきました」と作品に対する熱い思いを吐露した。

田中監督は「お二人の現場に対する集中力は凄まじいものがあり、それをどう受け止めて、一番良い状態で芝居をして頂くということをスタッフと共に、日々頑張ってやってきました。海老蔵さんに出て頂きたくて出て頂きたくて、僕と原作者の思いがやっと叶い、同じ思いで中谷さんにも早くから声をかけさせて頂きました。思いの詰まったお二人に演じて頂いたことは、僕にとっても山本さん、スタッフにとっても非常に感慨深い作品となりました」と語った。また、利休の先輩茶人、武野紹鷗役を故・市川團十郎が演じているが、「駄目で元々とお話を持っていったら、大変な時期に快く引き受けて下さった」と感激の様子。市川は親子共演について「(父は)少ないシーンなのに資料を山のように積んで、こだわった役づくりで監督と話し合っていた。撮影時、コンディションは良くなかったと思う。もしかすると映画が公開する時には自分の命があるか無いかということを認識していたのではないかという節も感じてしまった。父の姿をこの映画で見ると、武野紹鷗であり、市川團十郎であり、父でありと言葉では言い表せないものがある」と感無量の様子。

映画を観た感想については「映画を観て泣いたりしないのですが、最後に涙が出た。若い方にも観て頂きたいと思う。芸術は普通のところから始まって、成長していくという過程が描かれているいい映画です」と語り、中谷は「監督の美意識の高さは利休に匹敵する感じでした。この現場に立てて嬉しい。海老蔵さんのお芝居から、作法、しきたりを越えて、お茶とはこういうものだという事を教えて頂きました。涙の出るポイントが三つありました」と明かした。

また、京都ロケで印象に残っている場所を聞かれると中谷は「利休が作ったお茶室“待庵”を見学しまして、450年前に作られた壁、建材がそのまま残っていて、ただならぬ気配を感じました。その気持ちを胸に、待庵のセットでのお芝居に臨むことが出来ました」と語り、市川は「三井寺が良かった。あと、カニを食べた“間人(たいざ)の海”」。田中監督も「間人の海は印象的でした。波も高く、1日の撮影で3シーン撮りましたが、天候が変化して雨も曇りも晴れも撮れて、ツイてる1日となりました」と語った。

公開情報 東映配給「利休にたずねよ」は2013年12月7日(土)から全国公開
公式サイト:http://www.rikyu-movie.jp/

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