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戦争映画を映画人として作り続ける!役所広司主演「日本のいちばん長い日」完成報告会見(2015.05.20)

昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクションを原田眞人監督が完全映画化した「日本のいちばん長い日」の完成報告会見が5月20日(水)に行われ、主演の役所広司をはじめ、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、そして原田監督が登壇した。役所は「戦後70年を記念して作られた原田監督の作品に出演できて嬉しいです。終戦を迎えるその日を描いた映画を、一人でも多くの方に観て欲しい」と挨拶。またこの日、戸田恵梨香、松山ケンイチも特別出演していることが初めて明らかにされた。

戦況が困難を極める太平洋戦争末期、連合国は日本にポツダム宣言受諾を要求。降伏か本土決戦か、連日連夜、閣議での議論が紛糾するうちに、広島、長崎に原爆が投下され、“一億玉砕論”が渦巻く。決断に苦悩する阿南惟幾 陸軍大臣、国民を案ずる天皇陛下、聖断を拝し閣議を動かしていく鈴木貫太郎首相。日本が破滅へと向かう中、平和への礎を築くために苦悩し、身を挺した人々の壮絶なドラマを描き出す。

原田監督は「54年の『日本敗れず』も、67年の岡本喜八監督による『日本のいちばん長い日』も天皇が描かれませんでしたが、やはり昭和天皇が全面的に出て来ないと作品として成立しないと思いました。自分の中では、これは一つの記念碑的な作品になりました」と自負。更に「『ひょっとして昭和天皇を描けるかも』と思ったのが、2006年にアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』でイッセー尾形さんが天皇を演じられていた時です。公開が危ぶまれてもいましたが、事件も起こらず、ここで変わったという印象がありました」と、長年企画を温めていたことを明かした。

徹底抗戦を主張する陸軍を代表しながらも、天皇の身を案じて苦悩する陸軍大臣・阿南惟幾を演じた役所は「喜八監督の『日本のいちばん長い日』では阿南陸相を三船敏郎さんが演じられていたので、『やだなー』とちょっとプレッシャーを感じましたが(笑)、原田監督が新しい陸相を作ってくれると期待しました。『山本五十六』の時も、三船さんの後でプレッシャーだったんですけどね」と2度に渡って名優と同じ役を演じることになったことを冗談まじりに語った。

国民を想い平和を希求する昭和天皇役として、7年ぶりの本格的なスクリーン復帰となった本木は「恐れ多くも未熟な自分が(この役を)背負えるのかと思いながらも、深い知識と懐を持つ原田監督に全てお預けしました」と緊張気味にコメント。また、天皇役を引き受けるか迷いもあったようで「義母の(樹木)希林さんから『この役があなたに来た意味合いが分かる気がする。力のある監督だし、天皇を演じる機会もあまりないんだから、やるべきでは?』と背中を押していただきました」と、原田監督の『わが母の記』にも出演している樹木からアドバイスされたことを明かした。

内閣書記官長・迫水久常を演じた堤は原田組の常連とも言え、「この作品に参加できたことを誇りに思います。とにかく観ていただいて、感想を聞きたい」としながらも、「山崎努さん演じる鈴木首相の補佐的な役だったんですが、こんなに気迫がある現場は嫌です!今年、51になるんですけど、内閣のシーンでは常に僕が年下で、なかなか無いことだったので、途中でもどしそうになり、そんな緊張感が画面に出ていると思います」と明かした。

終戦に反対し、日本の未来を想いながらも狂気に駆られていく陸軍の青年将校・畑中少佐を演じた松坂は「戦争を経験していない世代ですが、この映画が考えるきっかけを与えてくれたので、多くの人々にも戦争について考えるきっかけを与えられたらと思っております。畑中少佐は本当に純粋で、日本が勝つことを信じて疑わず、最後まで生きた方だと思います」と清々しく語り、初めての坊主頭に抵抗は無かったのか聞かれると「なんて楽なんだろうと思いました。坊主、いいですね!すぐ乾くんで」とお気に入りの様子。

最後に原田監督は「キーワードは、阿南陸相のセリフにもある『軍をなくして、国をのこす』。この精神を我々はずっと継承していかなければならない。多くの世代の人に観ていただきたいです」と語り、役所も「前作では戦争を体験した世代が撮られていましたが、今回は戦争を知らないスタッフ、キャストにより作られました。戦争映画を映画人として作り続けなければいけないと思っています。いつか松坂君が阿南陸相を演じる時が来るかもしれません。その時に僕は鈴木貫太郎役で出演できればと思います(笑)」と語り、会場を沸かせた。

公開情報 アスミック・エース/松竹配給「日本のいちばん長い日」は2015年8月8日(土)から全国公開
公式サイト:http://nihon-ichi.jp/

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