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宮崎駿監督が「覚悟を持ってやれ!」と叱咤激励!米林宏昌監督「メアリと魔女の花」製作発表会見(2016.12.15)

「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後に初めて手掛ける長編アニメーション「メアリと魔女の花」の製作発表会見が12月15日(木)に行われ、2014年末に同じくスタジオジブリを退社した西村義明プロデューサーと共に登壇した。本作はメアリー・スチュアートの「The Little Broomstick」を原作とし、2015年4月15日に西村氏が立ち上げたアニメーション制作会社「スタジオポノック」の初作品。スタジオ名の「ポノック」とはクロアチア語で「深夜0時」を意味し、新たな一日のはじまりの意味を込めているそうで、スタジオ設立の経緯やジブリの宮崎駿、高畑勲、両監督と鈴木敏夫プロデューサーの反応などが明かされた。

西村プロデューサーは「2013年に高畑監督の『かぐや姫の物語』と宮崎監督の『風立ちぬ』が公開されましたが、僕は『かぐや姫』のプロデューサーをしながら、米林監督の『思い出のマーニー』の準備もしていました。そして9月には宮崎監督が引退を発表し、鈴木プロデューサーから『宮さんが引退することで、ジブリの体制を維持するのは難しくなるから製作部門を解散する』と言われました。でもその時は2作品の責任者として手一杯で、『マーニー』のキャンペーンを周り、スタジオに米林監督と帰って来ると、がらんどうになっていて、“ジブリの一時代が終わった”と初めて実感しました」と述懐。

「思い出のマーニー」の打ち上げ後、とあるバーに米林監督と向かった西村プロデューサーは「マロさん、もう1本映画を作りたいですか?」と問いかけたそうで、「普段ならよくよく考える監督が『作りたいです』と即答しました。『僕をプロデューサーとして選んでくれるなら、現場を作ることができます。僕に委ねてください』と僕も言いました」と2人での新たな道が始まったことを明かした。しかし正直なところ不安だらけだったという西村プロデューサーは、企画がなかなか進まず、ハローワークに行ったその夜、『かぐや姫の物語』がアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされたという報せを受けたそう。

そしてアカデミー賞への出席が大きな転機となった西村プロデューサーは「授賞式前のシンポジウムで、『ベイマックス』のドン・ホール監督が『アニメーション映画は世界中の子供たちが初めて映画館で観るものだから、責任を感じるし、喜びでもある』という話をしていて、ディズニーのジョン・ラセターの下で映画を作る人たちの志が根付いていることに感銘を受けたし、焦りも出てきました。宮崎、高畑、鈴木の3人の映画作りの考え方や姿勢をこの先誰が引き継ぐのか?という思いもありましたし、ジブリが一番と思う一方で製作部門解散という空しさもあり、新スタジオを作る決意をし、米林監督にも帰国後『ジブリの血を引いた作品を作ろう』と話しました」とスタジオ設立の経緯を明かした。

また、映画の詳しい内容については秘密ということだが、「米林監督はダイナミックな作品が得意で、『マーニー』は合わないような気がしたのですが、細かな心情も描けることがわかり、結果的に作って良かった。でも、プロデューサーとしてはダイナミックで元気な女の子が爆発するファンタジーをやってほしいと思いました」とし、米林監督も「『マーニー』で終わってもいいという気持ちでいたのですが、もう一本作るなら全然違う作品を作って、皆さんのイメージを裏切りたいと思いました。メアリは何をやっても上手くいかず、自分の容姿も気に入らない女の子ですが、不思議な力を手に入れたことから冒険に出ます。一緒に応援したくなるような、観て下さる方々の背中を押してあげられるような作品を作りたい」と明かした。

米林監督と西村プロデューサーが2人で宮崎監督のところに長編映画を作ることを告げにいった際には「だったら今すぐ帰れ!長編をやるなら、覚悟を持ってやれ!」と言われてしまったそう。その後、米林監督が改めて鋭意製作中であることを告げに行くと、「うれしい!」と思わぬ反応を得たそうで、「こんなに素直な言葉が出てくる人なんだと思い、逆にプレッシャーになりました」と苦笑い。西村プロデューサーも鈴木プロデューサーから「覚悟してやりなさい」と同じ言葉を言われたそうだが、高畑監督からは「おもしろいな」とファンタジー嫌いの監督にしては珍しい好感触を得たということだった。

また、魔女が題材となっているということで、どうしてもジブリの「魔女の宅急便」を思い浮かべてしまいがちだが、西村プロデューサーは「僕らは子供の頃に『魔女の宅急便』を観て楽しみました。今度は僕らの子供たちに向けて新しい魔女映画を作りたい。僕らならできるはずだ!と思いました。スタジオポノックで作品を作り出すクリエイターたちは、宮崎、高畑、鈴木の血を受け継いでいます。米林監督も20年間、3人と映画を作り、3人から学んで培ってきたジブリ人生の全てをこの1本に注ぎ込んでほしいと思っています」と力強く語った。

公開情報 東宝配給「メアリと魔女の花」は2017年夏全国公開
公式サイト:http://www.maryflower.jp/

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