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真実を伝えることが大切!「記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜」ロブ・ライナー監督来日会見(2019.02.01)

9.11のアメリカ同時多発テロが発生し、政府が踏み切ったイラク侵攻の大義名分である「大量破壊兵器」の存在に疑問を持ち、真実を追い続けた4人の記者の奮闘を描いた「記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜」を手掛けたロブ・ライナー監督が来日し、2月1日(金)に日本外国特派員協会で会見を行った。日本で取材を行う外国人記者たちからの質問にも熱心に監督は答え、「独裁政治と民主主義のテンションが高まっている今、政府の信頼度を問う意味でも、ジャーナリズムは真実を伝えていかなければならないと思う」と熱く語った。

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「大量破壊兵器保持」を理由にイラク戦争を始めようとしていた。新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコットは、部下のジョナサン・ランデー、ウォーレン・ストロベル、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイに取材を指示。しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作であることを突き止めるのだが・・・。ナイト・リッダーのワシントン支局長をロブ・ライナー監督自身が演じ、ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マーズデン、トミー・リー・ジョーンズが個性豊かな記者たちを演じている。

ライナー監督は「我々は9.11とフセインに繋がりがないことも、イラクに大量破壊兵器が無いことも分かっていたのに、ああいう状況になってしまったのは心が痛かった。政府が一般市民の恐怖心を煽り、9.11より前に出来上がっていたイラク侵攻の筋書を実行したのは、中東にも西洋式の民主主義を広め、情勢を安定させる狙いもあったのだろう。アメリカ市民が政府の嘘を鵜呑みにし、惨事に繋がっていった様子をどうやって映画として描けるか考えていた時、ジョンソン大統領の報道官だったビル・モイヤーズのドキュメンタリーを観て、本作の主人公となるナイト・リッダーズの4人の記者たちの存在を知り、彼らを描こうと思ったんだ」と明かした。

さらに「最初は『博士の異常な愛情』のような風刺劇にしようか、それともドラマ作品にしようか?など試行錯誤して上手くいかなかった。4人の存在を知ったことで、彼らが真実をつかみ、そのことを一般市民に届けようとしたが出来なかった、それは何故なのか?ということを基盤に映画が作れると思った」とコメント。また、日本が「報道の自由度」において2010年の11位から2018年には67位にまで下がっているということを聞き、「アメリカ人は9.11のトラウマと向き合いながら、政府に批判的なことをすると“非愛国者”だと思われる状況があった。報道の自由が脅かされるのは恐ろしいことだが、日本は独裁国家というわけではないので、この作品も自由に受け入れてくれたら嬉しい」と語った。

また、元ナイト・リッダー社で記者をしていたケン・モリツグ氏も同席し、「まずはこの映画を作ってくれたことに感謝したい。知られざる記者たちの姿を伝えてくれて、胸が熱くなった。私は経済部にいたが、9.11の時にちょうどニューヨークで経済会議があり、ライナー監督が演じているウォルコット支局長からテロの取材をするよう言われた。その後、『イラク侵攻は本当なのか?』とウォルコットに聞いた時も、彼は『信じなさい。本当にこれから戦争になるのだから』と言っていた」と明かした。

現在のトランプ政権下においても報道は“フェイクニュース”として片づけられ、人々の話題や興味を引くニュースが取り上げられがちな現状に対してライナー監督は「1960年代に『60minutes』(CBS放送のドキュメンタリー番組)が誕生して以降、ニュースが一つの商品のようになり、収益性に繋がるかどうかにシフトしていったように感じる。真実に辿りつくのであればいいが、メディアも大企業の傘下となってきて、健全なニュースであるかどうかを見極めなければならない。見たいメディアしか見ない人々に、どう真実を伝えていくかが大切だと思う」と神妙な面持ちで述べた。

最後にモリツグ氏が「近年は『スポットライト 世紀のスクープ』や『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』など報道の真実について描いた作品が続いていますが、こういったジャンルの映画が確立されてきていると思いますか?」と監督に投げかけると、「それはわからないな。観客はひたすらキーボードを打つ人の姿を映画で観るより、爆発シーンとかを観たいんじゃないかな(笑)。でもこういった映画が真実に光を当てることができるのであれば、それは素晴らしいことだと思うよ」と答えた。

公開情報 ツイン配給「記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜」2019年3月29日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開
公式サイト:http://reporters-movie.jp/

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